婚姻費用の計算

婚姻費用の計算について


婚姻費用の計算は、標準的な算定方式では以下の手順になります。

(1)夫婦それぞれの年収を確定
(2)夫婦それぞれの基礎収入を計算
(3)権利者世帯に配分される婚姻費用を計算
そのうえで、
(4)義務者の婚姻費用分担額を計算

この婚姻費用計算の過程で、子がいる場合にはその年齢と人数が関係します。

    • 婚姻費用を支払う側を「義務者」、受け取る側を「権利者」と呼びます。
    • 「子」は、婚姻費用に含まれる養育費の対象となる未成熟子をいいます。

関連ページ 婚姻費用

      婚姻費用と学校教育費

婚姻費用の計算内容

婚姻費用の計算について、上記の算定方式による手順の各内容をご説明します。


(1)夫婦それぞれの年収を確定


婚姻費用の計算では、まず、夫婦それぞれの年収を確定します。

その資料としては、勤務先から取得した源泉徴収票や、行政機関から取得した課税証明書が多く使われており、状況によっては給与明細・賞与明細などを資料とすることもあります。

(課税証明書は、収入がない場合は非課税証明書となります)

潜在的稼働能力による収入評価も


また、本来はもっと働いて収入を得られるはずなのに、それに見合わず低額収入や無収入である場合に、潜在的稼働能力という評価方法によって、実際の収入を上回る額を婚姻費用計算における年収として擬制することもあります。


(2)夫婦それぞれの基礎収入を計算


婚姻費用の計算において、基礎収入とは、年収総額から、公租公課や就労に必要な出費、住居関係費など、婚姻費用に振り分けるべきでない一定の金額を控除したものです。

その控除をした後の基礎収入の割合が設定されており、夫婦それぞれ、年収にその基礎収入割合を掛けて、基礎収入を計算します。

基礎収入割合


基礎収入割合は、年収が何万円から何万円の間について何%という具合に段階ごとに設定されており、給与所得者、自営業者それぞれ、以下の表のとおりです。

(それぞれ表の中の左側が年収、右側が基礎収入割合です)

給与所得者
単位:万円
割合   自営業者
単位:万円
割合
0~75 54%   0~66 61%
~100 50%   ~82 60%
~125 46%   ~98 59%
~175 44%   ~256 58%
~275 43%   ~349 57%
~525 42%   ~392 56%
~725 41%   ~496 55%
~1325 40%   ~563 54%
~1475 39%   ~784 53%
~2000 38%   ~942 52%
      ~1046 51%
      ~1179 50%
      ~1482 49%
      ~1567 48%


(3)権利者世帯に配分される婚姻費用を計算


ここで、子がいる場合にはその年齢と人数が計算に関係します。

その場合、婚姻費用の計算において、権利者世帯に配分される婚姻費用の額は、子の生活費指数を使って計算します。

生活費指数


生活費指数とは、家庭の中で生活費が割りあてられるべき各人1人ずつの割合(親1人を100として設定)であり、統計から導かれた基準となる生活費が考慮されています。

子については、年齢によって区分され、公立学校教育費が考慮されています。

その生活費指数は以下のとおりです。

権利者=100、義務者=100、
子=14歳以下は62、15歳以上は85

権利者世帯の婚姻費用の計算式


そして、権利者世帯に配分される婚姻費用の計算式は以下のとおりとなります。

(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)
×(100+子の生活費指数合計)
÷(200+子の生活費指数合計) 
=権利者世帯に配分される婚姻費用

〔計算式の説明〕

  • 100は権利者の生活費指数、200は権利者・義務者の生活費指数の合計です。
  • 子の生活費指数については子全員分を合計します。

(4)義務者の婚姻費用分担額を計算


婚姻費用の計算において、義務者の婚姻費用分担額は、以下のとおり計算され、これを義務者が権利者に支払うことになります。

上記(3)で算出された額
-権利者の基礎収入
=義務者の婚姻費用分担額
→12で割ると月額


婚姻費用の計算例

婚姻費用について、上記の算定方式による計算例は以下のようになります。

※ここでは、計算過程における金額の調整は行わず、ただし小数点以下は切り捨てとしています。また、夫婦のどちらが権利者でどちらが義務者かは設定していません。

設例

権利者:年収300万円の給与所得者
義務者:年収600万円の給与所得者
子:14歳以下1人(生活費指数62
  15歳以上1人(生活費指数85

婚姻費用の計算

(1)夫婦それぞれの年収
 設例に記載のとおり確定。

(2)夫婦それぞれの基礎収入
 権利者:300万円×42%126万円
 義務者:600万円×41%246万円

(3)権利者世帯に配分される婚姻費用
 基礎収入合計(126万円+246万円)
 ×(1006285
 ÷(2006285
 =2647953

(4)義務者の婚姻費用分担額
 上記(3)で算出された額2647953
 -権利者の基礎収入126万円
 =1387953円
 →月115662


さらに具体的には、ご相談いただけますでしょうか。


養育費の請求を伴うご依頼について

 離婚のご依頼について、当事務所では、離婚後の養育費を受け取る側の場合、裁判所の算定表・算定方式の範囲内なら養育費の獲得を弁護士報酬の対象とせずに承っております。
   弁護士費用ページへ 

このページの筆者弁護士滝井聡
このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)