親権者指定の手続

協議・調停・和解・判決の各段階について


未成年の子どもがいる場合、離婚に際し親権者を決める手続としては、裁判における判決に至る前に、①離婚協議、②離婚調停、③裁判における和解協議という3段階の話し合いの機会あります。

そのいずれかの段階でどちらを親権者にするかの話し合いが決着し、他の離婚条件とともに合意できれば離婚成立に至り、いずれの段階においても合意ができなければ、④裁判所の判決によって親権者の定めがなされます(離婚そのものが認められる場合に)。

  • 調停は申立て、裁判は訴え提起があることが前提です。
  • 裁判で控訴すれば再び和解協議がありえますが、このページでご説明するのは一審判決までの場面になります。

協議離婚、調停離婚、和解離婚、裁判離婚のそれぞれにおける、親権者指定の手続についてご説明します。


関連ページ 親権

協議離婚における親権者指定

離婚届に記載して提出

夫婦が協議離婚をするためには、未成年の子がいる場合、その協議で一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。

協議離婚は離婚届を市町村役場へ提出することによって成立し効力を生じますが(民法764条・739条)、その離婚届には親権者を記載する必要があり(戸籍法76条1号)、親権者の記載のない離婚届は受理されないこととされています(民法765条1項)。

そして、親権者の記載のある離婚届が受理され離婚が成立したときに、親権者指定の効力が生じるとするのが多数説です(父母の協議によって直ちに効力が生じるとする少数説もあります)。

親権者の不記載及び独断記載について

協議離婚における離婚届について原則は上記のとおりなのですが、親権者の記載のない離婚届が誤って受理された場合、離婚そのものは有効とされています(民法765条2項)。

また、協議に基づかず一方が独断で親権者を記入した離婚届が受理された場合について、離婚自体の合意があれば離婚は有効に成立するとされています(名古屋高裁昭和46年11月29日判決、東京高裁平成15年6月26日判決、東京高裁平成20年2月27日判決など)。

とはいえ、離婚をする当事者としては、親権者について協議をして、その協議に基づき離婚届に記載すべきことはいうまでもありません。


調停離婚における親権者指定

裁判所での話し合い

離婚の手続として裁判所を利用する場合、まずは調停から始める必要があります(調停前置主義。家事事件手続法第257条)。

離婚調停は、家庭裁判所での期日における話し合いであり、ときには期日外の協議も合わせて進行します。

その結果、期日に合意が成立すると、その合意内容は裁判所作成の「調書」という文書(いわゆる調停調書)に記載されます。

そして、離婚の合意とともに親権者指定についても合意が成立し、調書に記載されると、離婚とともに親権者指定の効力が生じます(確定判決と同一の効力。家事事件手続法268条1項)。

離婚調停の全般的なことについては、以下のページやその派生ページをご覧いただければと思います。
   離婚調停         

親権争いがおさまらない場合

離婚調停では、双方が離婚そのものについて合意しているけれど、親権争いがおさまらず親権者指定について合意できないということが起こりえます。

そのような場合、制度上は、離婚事件全体を審判で処理する方法や、離婚は成立させ親権者指定を別途審判に委ねる方法も可能とされています。

しかし、一般的には、親権者指定の合意ができないのであれば、離婚調停は不成立とされ裁判で決着することになるのが通常です。


和解離婚における親権者指定

裁判官の心証開示も

離婚裁判では、一定の主張・立証がなされると、裁判官から和解協議をすすめられるのが通常です。

和解協議も家庭裁判所での期日における話し合いですが、和解できない場合に判決を書くこととなる裁判官が、ときには心証を開示しながら協議を指揮します。

その結果、期日に合意が成立すると、その合意内容は裁判所作成の「調書」という文書(いわゆる和解調書)に記載されます。

そして、離婚の合意とともに親権者指定についても合意が成立し、調書に記載されると、離婚とともに親権者指定の効力が生じます(確定判決と同一の効力。人事訴訟法37条1項・民事訴訟法267条)。

手続・時間の経過

裁判における和解協議になったとき、離婚調停のころに比べると、調停不成立という区切りを経て、訴え提起や主張・立証などの手続が積み重ねられていて、かなりの時間も経過しています。

また、弁護士が代理人となっていれば、当事者本人が出頭しなくても大部分が裁判官と代理人の協議で進行し、当事者本人は裁判官から要請があったときに出頭するのが通常です。


裁判離婚における親権者指定

判決確定で効力が生じる

離婚裁判では、離婚が認められる場合に、判決によって父母の一方が親権者に指定されます(民法819条2項)。

その判決が控訴なしに確定すると、離婚とともに親権者指定の効力が生じます。

親権者指定の考慮要素として、一般的には次のようなものがあります。

  • 監護の継続性
    • 監護者の継続性と監護環境の継続性。監護者は同じでも居所が変わると環境が変わることになります。
  • 監護状況
    • 従来の監護・教育の実績、経済状態、生活環境などの事情を考慮。監護の継続性に含めて考えることもできます。
  • 母性的役割の尊重
    • 乳幼児について、母性的に接してきた側が監護者としてふさわしいという考え方。母親のことが多いですが、父親もありえます。
  • 子の意思の尊重
    • 15歳以上なら意向を聞くのは必須。15歳未満でも子の意向を尊重すべきとする考え方。
  • 面会交流への許容性
    • 子と別居親との良好な関係を保てるようにすることを重視する考え方。
  • 兄弟姉妹の不分離
    • きょうだいが離ればなれにするのは好ましくないとする考え方。

ただし、これらは確定的なものでなく様々な考え方があり、どのような要素をどの程度重視するかは、具体的状況によります。


調査官調査

離婚調停や離婚裁判では、親権などに争いがある場合、必要に応じて調査官の調査が行われます(調査が行われないこともあります)。

調査官とは、心理学、社会学、社会福祉学、教育学などの専門的な知識や技法をもち、それらを活用して調査活動などを行う家庭裁判所の職員です。

調査の方法としては、父、母、子それぞれとの面談や、家庭訪問などがあり、これらによって調査官は争いの解決に役立つ情報を調査結果として裁判官に報告し、報告に意見を付することもできます。

この調査官調査が行われると、裁判官は調査結果を重視するのが通常です。


調停・和解・裁判離婚における離婚届

調停・和解・裁判のいずれの離婚においても、効力が生じた日から10日以内に離婚届を市町村役場へ提出する必要がありますが(戸籍法77条・63条)。

これは戸籍に記載してもらうためであり、既に効力が生じた内容についての報告的届出となります。

これに対し、協議離婚については離婚届を市町村役場へ提出することによって効力を生じ(民法764条・739条)、これは創設的届出となります。


関連法令規定

以上の内容に関連する法令の規定のうち主なものを掲載します。

民法764条(婚姻の規定の準用)
第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。

民法739条(婚姻の届出)
1項 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2項 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

民法765条(離婚の届出の受理)
1項 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2項 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

戸籍法76条 離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
 一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
 二 その他法務省令で定める事項

戸籍法77条
1項 第63条の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
2項 前項に規定する離婚の届書には、左の事項をも記載しなければならない。
 一 親権者と定められた当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
 二 その他法務省令で定める事項

戸籍法63条
1項 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2項 訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。

家事事件手続法257条(調停前置主義)抜粋
1項 第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
2項 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。

家事事件手続法268条(調停の成立及び効力)抜粋
1項 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第39条の規定による審判)と同一の効力を有する。

民事訴訟法267条(和解調書等の効力)
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。


このページの筆者弁護士滝井聡
このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)