共同親権
共同親権とは、父母双方とも未成年の子の親権をもつことで、これに対し父母の一方が親権をもつことを単独親権といいます。
離婚協議や離婚調停の話し合いでは共同親権か一方の単独親権かを選択でき、争いになって決着がつかなければ裁判所の判断にゆだねることになります。
共同親権における親権行使の内容
親権者が親権を行使する場面としては、子の身上監護(身の回りの世話や教育)、財産管理、身分行為の代理がありますが、離婚をして共同親権になっても、それらの全てを父母が共同で行使すべきことになるわけではありません。
共同で行使すべき事項と、一方が単独で行使できる事項を分類すると、以下のようになります(民法824条の2)。
共同で行使すべき事項
- 身上監護に関する重大行為
- 転居、進学先決定、心身に重大な影響を与える医療行為など。
- 子の財産管理に関する行為
- 預貯金口座開設、子に債務を負担させる契約、子の財産の処分など。
- 身分行為の代理
- 子の氏の変更など。
一方が単独で行使できる事項
- 身上監護に関する日常行為
- 食事、服装、習い事、短期間の観光目的の旅行、高校生のアルバイト許可、心身に重大な影響を与えない医療行為など。
- 子の利益のため急迫の事情があるとき
- DVや虐待からの避難、緊急の医療行為、入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っているような場合など。
学校に関し一方が単独行使できる事項
子の学校生活に関する以下の行為は、「監護及び教育に関する日常の行為」(民法824条の2第2項)として、親権者の一方が単独で親権行使できると考えられています。
- 学校給食に係る手続
- 給食費納付、アレルギーの連絡など
- 個々の教育活動への参加の同意
- 学校行事、宿泊活動、水泳授業など
- 学校が行う教育相談への対応
- 家庭訪問、三者面談への出席など
- 出欠の連絡
- 就学時の健康診断の受診
- 子の学校生活に関する照会
親権行使者の指定
共同親権のもと、共同で親権行使すべき特定の事項について、父母間で協議が調わないときは、父又は母は、家庭裁判所に、親権行使者指定の調停・審判を申し立てることができます。
その対象となるのは、身上監護に関する重大行為(「日常行為」に該当しない行為)、子の財産管理に関する行為、身分行為のいずれかに該当する、特定の事項の親権行使です。
家庭裁判所は、その特定の事項であり、子の利益のため必要があると認めるときは、父母の一方が単独で親権行使できる旨を定めることができます。(民法824条の2第3項)
裁判所が親権者を定める判断方法
協議離婚で親権者指定を求める審判の申立てがされたときや、離婚裁判で離婚そのものが認められるときは、裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定めることになります(民法819条2項・5項)。
「父母の双方」は共同親権、「一方」はどちらかの単独親権です。
その裁判所による指定の判断について、民法は、「子の利益のため」、「父母と子との関係」、「父と母との関係」、「その他一切の事情」を考慮しなければならないと規定しています(民法819条7項前段)。
ただし、必ず父母のどちらか一方を親権者と定めなければならない「必要的単独親権事由」といわれる事情も規定しています(民法819条7項後段)。
必要的単独親権事由
民法819条7項後段は、以下いずれかの事由に該当するときは、父母のどちらか一方を親権者と定めなければならないと規定しています。
- 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
- 父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
- その他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき。
そして、上記のうち2の「共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」の該当性については、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無や、親権者に関する協議が調わない理由その他の事情を考慮して判断することとしています。
離婚後の親権者変更について
離婚のときに定められた親権者について、家庭裁判所は、子の利益のため必要があると認めるときは変更することができます(民法819条6項)。
その親権者変更については、選択的共同親権制度が導入されたことにより、一方の単独親権から他方の単独親権への変更のほか、単独親権から共同親権への変更や、共同親権から単独親権への変更が可能になりました。
親権者変更の要件と考慮要素
裁判所が親権者変更を判断するための要件は、「子の利益のため必要」であることです(民法819条6項)。
そして、民法819条8項は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっての考慮要素として、①当該協議の経過、②その後の事情の変更、③その他の事情を規定しています。
- さらに、同項は、上記のうち①当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとすると規定しています。
なお、裁判所が定めた親権者を変更する場合は、上記のうち①当該協議の経過は考慮要素から除かれることになります。
親権者変更の申立権者
親権者変更の申立権者として、民法819条6項は「子又はその親族」と規定し、子本人も申立てができることを定めています。
令和8年4月1日に改正施行される前は「子の親族」だけを申立権者とする規定でしたが、子は親権者変更により直接影響を受けるため加えられたものとされています。
関連する主な法令規定
- 民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)
- 1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
- 2項 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
- 3項 子の出生前に父母が離婚(以下省略)
- 4項 父が認知した子に対する(以下省略)
- 5項 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
- 6項 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
- 7項 裁判所は、第2項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
- 一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
- 二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第1項、第3項又は第4項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
- 8項 第6項の場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)第1条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。
- 民法824条の2(親権の行使方法等)
- 1項 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。
- 一 その一方のみが親権者であるとき。
二 他の一方が親権を行うことができないとき。
三 子の利益のため急迫の事情があるとき。
- 2項 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。
- 3項 特定の事項に係る親権の行使(第1項ただし書又は前項の規定により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。)について、父母間に協議が調わない場合であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができる。
このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)