婚姻費用の計算
計算は3段階
基礎収入割合や生活費指数を使って
婚姻費用の計算は、裁判所の標準算定方式では、次のとおり、基礎収入の計算からになり、権利者世帯の配分額、婚姻費用の支払額へと3段階で計算が進みます。
1.基礎収入を計算
2.権利者世帯の婚姻費用配分額を計算
3.婚姻費用の支払額を計算
この計算の過程で、基礎収入割合や、子がいる場合には親と子の生活費指数という、統計を基に設定された数値を使います。
婚姻費用の計算について、順を追ってご説明し、計算例も掲載ます。
- 婚姻費用を支払う側を「義務者」、受け取る側を「権利者」と呼びます。
- 「子」は、婚姻費用に含まれる養育費の対象となる未成熟子をいいます。
1.基礎収入を計算
1つめの計算は、夫婦それぞれの基礎収入の計算です。
基礎収入とは、収入(年額)から、公租公課や就労に必要な出費、住居関係費など、婚姻費用に振り分けるべきでない一定の金額を控除したものです。
その控除を簡易的に計算するための割合が「基礎収入割合」という名称で設定されていて、夫婦それぞれ、収入(年額)に基礎収入割合を掛けて計算します。
収入の確定が前提
基礎収入は、上記の通り夫婦それぞれの収入(年額) に基礎収入割合を掛けて計算するので、まず、その収入を確定することが前提になります。
収入の資料としては、源泉徴収票が多く使われており、課税証明書や、状況によっては給与明細・賞与明細などを資料とすることもあります(課税証明書は行政機関から取得するもので、収入がない場合は非課税証明書になります)。
また、本来の稼働能力に見合わない低額収入や無収入である場合に、潜在的稼働能力という評価方法によって、実際の収入を上回る額を婚姻費用の計算における収入とみなすこともあります。
基礎収入割合
夫婦それぞれの収入(年額)が確定したら、そこへ基礎収入割合を掛けます。
基礎収入割合は、年収が何万円から何万円の間について何%という具合に段階ごとに設定されており、給与所得者、自営業者それぞれ、以下の表のとおりです。
(それぞれ表の中の左側が年収、右側が基礎収入割合です)
給与所得者 単位:万円 |
割合 | 自営業者 単位:万円 |
割合 | |
0~75 | 54% | 0~66 | 61% | |
~100 | 50% | ~82 | 60% | |
~125 | 46% | ~98 | 59% | |
~175 | 44% | ~256 | 58% | |
~275 | 43% | ~349 | 57% | |
~525 | 42% | ~392 | 56% | |
~725 | 41% | ~496 | 55% | |
~1325 | 40% | ~563 | 54% | |
~1475 | 39% | ~784 | 53% | |
~2000 | 38% | ~942 | 52% | |
~1046 | 51% | |||
~1179 | 50% | |||
~1482 | 49% | |||
~1567 | 48% |
例えば、年収300万円の給与所得者の基礎収入は、300万円×42%=126万円になります。
2.権利者世帯の婚姻費用配分額を計算
2つめの計算は、夫婦双方の基礎収入の合計額から、婚姻費用を受け取る側(権利者)の世帯に配分されるべき婚姻費用の額の計算です。
子がいる場合には、その年齢と人数が関係し、権利者世帯に配分されるべき婚姻費用の額は、親と子の生活費指数を使って計算することになります。
生活費指数
生活費指数とは、家庭の中で生活費が割りあてられるべき1人ずつの割合です。
統計を基に設定されていて、親1人を100として、子については年齢によって区分され、公立学校教育費が考慮されています。
その生活費指数は以下のとおりです。
親(権利者)=100
親(義務者)=100
14歳以下の子=62
15歳以上の子=85
婚姻費用配分額の計算式
そして、権利者世帯に配分されるべき婚姻費用の計算式は、以下のとおりになります。
(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)
×(100+子の生活費指数合計)
÷(200+子の生活費指数合計)
=権利者世帯に配分されるべき婚姻費用
〔計算式の説明〕
- 100は権利者の生活費指数、200は権利者・義務者の生活費指数の合計です。
- 子の生活費指数については子全員分を合計します。
3.婚姻費用の支払額を計算
3つめの計算が最後で、婚姻費用を支払う側(義務者)が、受け取る側(権利者)に支払う額を計算します。
計算方法は以下のとおりで、これを義務者が権利者に支払うことになります。
上記2の「権利者世帯の婚姻費用配分額」
-権利者の基礎収入
=義務者の婚姻費用支払額
→12で割ると月額
婚姻費用の計算例
婚姻費用について、上記の算定方式による計算例は以下のようになります。
※ここでは、計算過程における金額の調整は行わず、ただし小数点以下は切り捨てとしています。また、夫婦のどちらが権利者でどちらが義務者かは設定していません。
設例
権利者:年収300万円の給与所得者
義務者:年収600万円の給与所得者
子:14歳以下1人(生活費指数62)
15歳以上1人(生活費指数85)
婚姻費用の計算
1.基礎収入
権利者:300万円×42%=126万円
義務者:600万円×41%=246万円
2.権利者世帯の婚姻費用配分額
基礎収入合計(126万円+246万円)
×(100+62+85)
÷(200+62+85)
=264万7953円
3.婚姻費用の支払額
上記2の264万7953円
-権利者の基礎収入126万円
=138万7953円
→月11万5662円
さらに具体的には、ご相談いただけますでしょうか。
このページの著者

弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)