義務としての養育費
養育費は離婚後も続く生活保持義務に基づく
養育費は、民法817条の12第1項後段に規定された、「子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない」という親の義務が根拠とされています。
この親の義務は、「生活保持義務」と呼ばれていて、離婚後も子に対し負い続ける義務です。
この生活保持義務に基づき、民法766条は、「子の監護に要する費用の分担」という表現で、離婚後の養育費の分担を定めるよう規定しています。
民法817条の12の生活保持義務
民法817条の12は、令和8年4月1日施行の改正民法で新設されました。
条文は以下のとおりで、このうち1項後段(下線部分)が、親の子に対する生活保持義務を定めています。
(親の責務等)
民法817条の12
- 父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。
- 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。
そして、「生活保持義務」に似た言葉として、「生活扶助義務」というものがあります。生活を「保持」か「扶助」かの違いで、これらを総称して「扶養義務」といいます。
民法877条の扶養義務
民法877条1項は、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」として、親族間の「扶養義務」を規定しています。
この扶養義務の中に、親の子に対する生活「保持」義務と、それ以外の直系血族及び兄弟姉妹の間の生活「扶助」義務があるものと、従来から解釈されてきました。
生活「保持」義務は、上記のとおり自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養する義務であり、生活「扶助」義務は、自己の生活を犠牲にすることがない程度の余力がある範囲で生活に困窮する親族を扶養する義務とされます。
そのうち生活「保持」義務について、民法817条の12第1項後段に明記されたということです。
民法766条「子の監護に要する費用」
離婚後の養育費は、経済的・社会的に自立していない子(未成熟子)の「監護に要する費用の分担」(民法766条)として、離婚後の監護親から他方の親へ請求します。
その民法766条は以下のとおり規定しています。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法766条
- 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
- 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
- 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
- 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
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弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)